令和6年の民法改正(家族法改正)の概要

令和6年5月17日、国会で、民法改正法が成立しました。

今回は、家族法の改正が行われました。主な改正点は、共同親権、養育費、親子交流に関することなどです。

『家庭の法と裁判』2024年8月号にも、特集が組まれています。

 

今回は、家族法改正の概要をメモ的にまとめます。

 

  • 親の責務等に関する規定の新設

<改正後の民法817条の12の内容>

親権の有無や婚姻関係の有無にかかわらず、父母は、子の人格を尊重してその子を養育しなければならない。

父母は、子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならない。

父母は、子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならない。

<改正後の民法818条1項の内容>

親権は、子の利益のために行使しなければならない。

★これまではこのような子の人格尊重や子の利益の観点の明確化が法律上明文化されていなかったところを、明文化したものです。

 

  • 親権に関する改正

改正前は、離婚後の子の親権は、必ず一方のみと定めるとされていました。しかし、父母双方が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが望ましいということから、改正後は、離婚後も双方を親権者とすることができることとしました。いわゆる共同親権を選択肢に入れるものです。(改正後の民法819条)

協議離婚をするときは、協議により、双方又は一方を親権者と定めることとし、その協議がととのわないときには、裁判所が、子の利益を考慮して、双方又は一方を親権者と定めることとなります。

ただし、父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、裁判所は必ず父母の一方を親権者と定めなければならない、としています。

親権の行使方法や意見対立の調整方法については、これまで法律上不明確でしたが、一定程度ルール化されました。

改正前の民法においても、親権者とは別に監護者を定めることはできましたが、監護の分担についてのルールはありませんでした。改正後は、そのルールや、親権と監護権との調整についての規定が設けられました。

 

  • 養育費に関する改正

これまでは、養育費の取り決めがされていても、公正証書や家裁の調停調書などの債務名義がない限り、民事執行の申立てができませんでした。これについて、改正法は、養育費のうち「子の監護に要する費用として相当な額」に限られますが、その分は、公正証書や調停調書なしで、民事執行の申立てができるようになりました。(改正後の民法306条3号、308条の2)

また、養育費の取り決めを補充する意味合いで、父母の生活水準に即した養育費の取り決めが行われるまでの当面の間、離婚時から一定額の養育費を請求することができるという「法定養育費」の制度が新設されました。(改正後の民法766条の3)

  • 親子交流に関する改正

別居親子が会って交流するやり方を民法766条1項の「父又は母と子との面会及びその他の交流」という条文に基づき「面会交流」と呼んでいたのですが、改正後においては法律に「親子の交流」という表現が用いられるようになったことで、「親子交流」と呼ばれることになります。

これまでの民法には、婚姻中の父母の別居時の親子交流について規定がありませんでしたが、規定が整備されました。

裁判手続中に親子交流が行われずに長期間が経過すると、親子関係に影響を与えかねないことから、適切な親子交流の実現のため、裁判所が、裁判手続中に、事実の調査のため、当事者に対し、親子交流の試行的実施を促すことができるようになりました(この改正は、家事事件手続法と人事訴訟法で行われています)。

祖父母等と子との交流についても、子の利益のために特に必要があるときは実施する旨を家庭裁判所が定めることができるようになりました(改正後の民法766条の2)。

  • 改正法の施行期日

この改正法は、交付の日(令和6年5月24日)から2年以内の政令で定める日から施行される予定です。

私見ですが、施行は令和8年(西暦2026年)になるのではないかと思われます。

離婚での弁護士依頼における「金沢市養育費確保サポート事業」の活用について

石川県金沢市の弁護士山岸陽平(金沢法律事務所)です。

bengokanazawa.jp

 

弁護士1名の事務所で、相続の案件が多めですが、離婚や家族関係、成年後見、不動産、契約関係、交通事故、刑事弁護なども、どんどん取り組んでいます。弁護士としてのキャリアは、約15年ほどになってきました。

2024年1月の能登半島地震後は、弁護士会活動として、震災被害に関する相談活動や、話し合い解決のための機関(能登震災ADR)の運営に取り組んでいます。

 

☆☆☆

 

今回は、金沢市役所が実施している「金沢市養育費確保サポート事業」について、離婚案件を弁護士に依頼する際に、こんなふうに使えますよ、というご紹介をします。

 

離婚案件については、年齢や、子どもの有無など、これまでに私が扱ってきた案件もさまざまです。未成年の子どもがおられる年代の離婚が比較的多いようには思います。

 

今回ご紹介する「金沢市養育費確保サポート事業」は、離婚の際に、子どもが18歳未満である場合に、弁護士費用などの負担を軽減するため、利用が検討されるものになります。

 

まず、市のホームページへのリンクを置いておきます。

www4.city.kanazawa.lg.jp

 

なお、金沢市のホームページには、

●注意点
・計画認定申請前に既に委任契約を締結していた場合の弁護士費用については対象外です。弁護士との委任契約前に市へご相談願います。
・市の毎年度の予算の範囲内で助成するため、全ての助成要件を満たした場合でも結果的に助成を受けられないことがあります。

という記載があります。「予算の範囲内」だということです。小さい予算枠ではないようなのですが、かなり申請される案件が多くあった場合には…ということのようです。

そのため、私としても、私を通じて金沢市に申請すれば必ず助成が受けられると言い切ることが難しいのですが、最初からこれを使わずに進めるよりも、制度をわかっている弁護士からのサポートを受けつつ進めるほうが、助成を受けられる可能性が高いことから費用的に有利な面があります。

 

それでは、助成対象を説明します。弁護士に依頼した場合によく用いる項目に絞って説明します。

・初回法律相談費用(1時間分)

 市からの弁護士紹介の場合の相談費用です。

家庭裁判所の手続(家事調停や訴訟)の実費 助成上限額:35,000円

  実費というのは裁判所に納める費用が主なものです。

ADR利用料 助成上限額:100,000円

  ADRは、弁護士会など、裁判所ではない機関での話し合いです。

・弁護士費用(着手金・報酬金) 助成上限額:着手金・報酬金 各100,000円

  この弁護士費用の助成は、利用者のメリットが大きいです! 

※養育費単独事件ではなく、離婚事件において離婚後の養育費を取り決める場合も含みますが、助成対象となる経費は、養育費に関する部分に限られます。

↑この※は金沢市のホームページの記載です。弁護士がサポートして市に説明し、できる限り助成につながるようにします。

 

金沢市ホームページの説明を元に、どんな人が対象になるのかも説明します。

※次の要件を全て満たす方

【計画認定申請時・助成金の交付申請時】

  • 金沢市内に居住していること。
    ※手続きの途中で転出入があった場合、助成金を支払うことはできません。
  • 配偶者のない方で、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子を現に扶養し、または扶養しようとしている母または父(離婚を検討している親も可)。
    ※一人で子を扶養していた方が結婚・再婚された場合にも要件を満たす場合があります。
  • 過去にこの助成を受けていないこと。

助成金の交付申請時】

  • 経費を負担して、養育費の取り決め・変更に係る債務名義(強制執行を行う際の申立てで必要になる文書)を取得したこと。<調停や訴訟の実費の場合>
  • 養育費の取り決め・変更のために、経費を負担して、裁判外紛争解決手続ADR)を利用したこと。(ただし、弁護士会または認証ADR事業者が実施するADRに限る。)<ADRの費用の場合>
  • 養育費の取り決め・変更または回収(強制執行)のために、経費を負担して、弁護士に事件を委任したこと。<弁護士費用の場合>

なかなか細かいですが、金沢市の市民でいつづけることが基本的な点だということです。

母だけでなく、父も、申請し、交付を受けることができる制度になっています。子どもが今一緒にいない状態であっても、婚姻費用や養育費の不払いをしているような状態でなければ、扶養している状態に当たるので、利用可能だということです。

ざっくり言って、養育費の金額には異論はあるけれども、養育費を支払っていきたいと思っているという方は使える制度です。

もちろん、養育費の約束をしようとしない相手のいるケースでも利用できます。

 

法テラスを使わず、自費で弁護士を依頼するケースにおいて、弁護士に支払った着手金・報酬金のうちの一定程度が助成されるのは、経済的に大きな意味を持ちます。

 

法テラスで民事扶助を受けた事件も対象ですが、法テラス事件の場合、依頼者が実際にお金を支出するのは、着手金については分割形式であることが多く、実際に払ったお金の分までしか助成が受けられないので、どのタイミングで助成金の交付申請をするかについて、考えないといけません。報酬金についても、分割払いの場合は、同様のことが言えます。

 

最後に、もう一度、金沢市のホームページに記載の注意点(1点目)を貼ります。

●注意点
・計画認定申請前に既に委任契約を締結していた場合の弁護士費用については対象外です。弁護士との委任契約前に市へご相談願います。

これは、弁護士に連絡する前に、金沢市に連絡してください、ということではありません。弁護士に「正式に依頼」する前に、金沢市に相談してくださいね、ということであって、その金沢市への相談は弁護士を通じてもできることになっています。

そのため、金沢市への相談の前にこちらにご連絡をいただいてもかまいません。もちろん、金沢市への相談後でもよいです。

そして、お電話の際には、「離婚の法律相談をしたい」ということと、「金沢市の養育費確保サポート事業(助成金)の申請を考えている」ということを、おっしゃっていただければ、ご対応が早くなると思います。

※法律相談には、基本的に法律相談費用5,500円<1時間程度以内>がかかります(法テラスに法律相談料の援助を申請できる場合は除きます)。

ご連絡・お問い合わせをお待ちしております。

 

bengokanazawa.jp

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〒920-0981

石川県金沢市片町1丁目1番29号

混元丹ビル9階 金沢法律事務所

電話 076-208-3227

弁護士 山岸 陽平

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不貞相手に対する離婚慰謝料請求

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190218-00000001-mai-soci

https://mainichi.jp/articles/20190216/k00/00m/040/146000c

この記事にあるように、2月19日に、不貞相手に対する離婚慰謝料請求(離婚後)について、最高裁が弁論を開き、請求を認容した一審・二審判決を覆す判断をする可能性が出てきています。

結論が変わるとして、結論を変える理由が、不貞相手に慰謝料を請求する場合の消滅時効の起算点の問題であるのか、そうでないのか? 最高裁がどのような論理をとるのか? など、現在少なくない紛争・訴訟類型であるだけに注目されます。

成人年齢の引き下げで、養育費支払いの終期はどうなるか?

民法改正による、成人年齢の引き下げ

2018年、成人年齢が18歳になる法律が成立し、2022年4月からは、18歳で成人となります。

詳細は、以下のとおりです。

法務省:民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について

 平成30年6月13日,民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が成立しました。
 民法の定める成年年齢は,単独で契約を締結することができる年齢という意味と,親権に服することがなくなる年齢という意味を持つものですが,この年齢は,明治29年(1896年)に民法が制定されて以来,20歳と定められてきました。これは,明治9年の太政官布告を引き継いだものといわれています。
 成年年齢の見直しは,明治9年の太政官布告以来,約140年ぶりであり,18歳,19歳の若者が自らの判断によって人生を選択することができる環境を整備するとともに,その積極的な社会参加を促し,社会を活力あるものにする意義を有するものと考えられます。
 また,女性の婚姻開始年齢は16歳と定められており,18歳とされる男性の婚姻開始年齢と異なっていましたが,今回の改正では,女性の婚姻年齢を18歳に引き上げ,男女の婚姻開始年齢を統一することとしています。
 このほか,年齢要件を定める他の法令についても,必要に応じて18歳に引き下げるなどの改正を行っています。
 今回の改正は,平成34年4月1日から施行されます。

養育費の根拠

民法877条1項の、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある」という条文が扶養義務を定めた条文であるが、夫婦間や未成熟な子に対しては強い扶養義務である「生活保持義務」が課せられるというのが一般的な解釈となっています。

「生活保持義務」は、自らの生活と同程度の生活を保持する義務です。

「未成熟な子」というのは、実務上、一般的な場合、未成年者とほぼイコールだと解釈されてきました。

親同士が離婚して、一方が親権者でなくなっても、親であるということに変わりはないので、子に対する「扶養義務」=未成年の子に対しては「生活保持義務」を負うことに変わりはなく、そのため、未成年の子を育てる親とそうでない親との間で「養育費」の形で調整を行うということになります。そして、裁判所は、その養育費は、「成人まで(成年に達するまで)」あるいは「20歳まで」という定め方をすることが多かったものです。

成人年齢引き下げで養育費はどうなるか?

上に書いたように、民法が定めているのは「直系血族」の「相互扶養義務」であって、子どもが何歳になるまで監護親が非監護親に養育費を請求できるか、ということを直接定めていません。

これまでは、個々の子どもが20歳になると成熟するだろうと言えるかどうか詳しく見ずに、成人年齢だけで未成熟か否かの判断を一応してきたといえますが、成人年齢の引き下げにより、この判断基準が動くのかどうかが問題になります。

・「一般的に、成人になると成熟する」という前提を維持する?

 この前提を維持するのであれば、養育費は18歳まで、となりやすくなります。

・「一般的に、成熟するのは20歳頃だ」という前提を維持する?

 この前提を維持するのであれば、養育費は20歳まで、となりやすくなります。

また、すでに「成人まで」と決めた養育費がどうなるか(改正後の成人年齢に従うのかどうか?)の問題もあります。

理屈上は改正後の成人年齢に従って養育費の支払い終期を18歳までに統一する方法もありうるところですが、民法改正にあたっての議論やその他論調の傾向からすると、一般的な養育費の支払い終期を短くする解釈はとられないものとみられます。

以下、法務省民事局のウェブページに載っていることです。

法務省:成年年齢の引下げに伴う養育費の取決めへの影響について

平成30年10月4日

 子の養育費について,「子が成年に達するまで養育費を支払う」との取決めがされていることがあります。
 平成30年6月13日に民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が成立したことに伴い,このような取決めがどうなるか心配になるかもしれませんが,取決めがされた時点では成年年齢が20歳であったことからしますと,成年年齢が引き下げられたとしても,従前どおり20歳まで養育費の支払義務を負うことになると考えられます。
 また,養育費は,子が未成熟であって経済的に自立することを期待することができない場合に支払われるものなので,子が成年に達したとしても,経済的に未成熟である場合には,養育費を支払う義務を負うことになります。このため,成年年齢が引き下げられたからといって,養育費の支払期間が当然に「18歳に達するまで」ということになるわけではありません。
 例えば,子が大学に進学している場合には,大学を卒業するまで養育費の支払義務を負うことも多いと考えられます。
 なお,今後,新たに養育費に関する取決めをする場合には,「22歳に達した後の3月まで」といった形で,明確に支払期間の終期を定めることが望ましいと考えられます。

 この文章は、既に決めた養育費が「成人まで」となっている場合には、20歳まで養育費の支払い義務があるだろうということを明言したものです。裁判所の解釈に委ねる姿勢はなく、立法意思として、ほぼこれで行きなさいというような感じです。

そして、後半部分ですが、成人年齢が引き下げられた以降の養育費の決め方について言及しながら、子が大学に進学している場合などは「成人後にも養育費は請求できる」ことを示唆しています。

最後には、改正後の成人年齢だけではなく、現在の成人年齢(裁判所が一般的に示す養育費の終期)を超える「22歳に達した後の3月まで」を養育費に関する取り決め例として挙げています。

この文章からは、「一般的に、成人になると成熟する」かどうかについて、当然のように否定で切り捨て、さらに、20歳というこれまでの養育費の終期の年齢を慣例のように残すのではなく、むしろ、大学に進学する場合には22歳まで養育費が発生するといった新しい基準に導く意図を感じます。

子が幼いころにこの子が大学に進学するかという話はそう簡単ではなく、これまでは、親の学歴などをもとに考え、双方が子を大学を出すのが当然だと考えたときに養育費を22歳までの設定していた多いのでしょうし、これまでは20歳から22歳までの養育費について議論されるのがやや特殊ケースといった風潮でした。

しかし、今後は、今回の成人年齢引き下げにより、「必ずしも20歳でなくてもいいのだ」という風潮と「子どもの多くは大学に行く時代であり、子どもは大学に行くことを希望している」くらいの根拠で、18歳から20歳だけではなく、20歳から22歳までの養育費に何らかの定めをするという傾向が進みそうな気がします。

また、既に決めた「成人まで」や「20歳まで」の養育費について見直しを求めたり、成人後に再度養育費を設定せよとの申立てが頻発しそうですし、養育費算定表で子が15歳になったら金額がアップすることなどにもっと目が向けられそうな予感がしています。

弁護士 山岸陽平

書籍『心の問題と家族の法律相談』

 近時出版された『心の問題と家族の法律相談 離婚・親権・面会交流・DV・モラハラ・虐待・ストーカー』(森公任弁護士、森元みのり弁護士。日本加除出版2017年)を入手しました。

 離婚についての専門書籍、心の問題についての専門書籍は、それぞれ多いですが、これをかけ合わせてクローズアップする書籍はそう多くはありません。

 そうした意味で、この書籍の目玉部分は、ページ数は少ないですが、第4章の「家族のトラブル 解決・対策の指針」です。また、第5章の「設例」も、近時の裁判所の判断傾向を踏まえた、男女、あるいは、離婚を求める側求められる側に偏らない解説がなされており、有用だと思いました。

 離婚と当事者の心の問題としては、パーソナリティ障害、依存症、気分障害が取り上げられており、それぞれの場合における争点への影響などが端的に解説されています。それぞれの心の状態が、配偶者等近しい人たちとの人間関係にどのような影響をもたらすのか、参考になります。

 離婚と子どもの心の問題に関しては、まず、離婚が子どもに及ぼす影響について、家裁月報の家庭裁判所調査官による調査結果を踏まえ、まとめています。発達段階、年齢ごとに、頻出する子どもの特徴や、両親の別居や紛争に対する反応がまとめられています。

 私としては、離婚やその前後も含むプロセスにより、子どもに多大なストレスがかかりがちであり、子どもの人格形成への影響が大きいことをよく踏まえていきたいと思いました。弁護士は、多くの場合、お話をおうかがいするのは、こちら側の当事者だけであり、相手方と直接に詳細まで話をする機会はあまりありませんし、子どもと話をすることもあまりありません。仕事の性質上、そうなるのは仕方がないことではありますが、子どもが幸福になる可能性を少しでも多く残し、少しでも増やせるように考えて取り組みたいところです。

 同書は、葛藤がある中での面会交流に際して注意すべきことや、当事者間の紛争性を高めないための考え方についても、端的にまとめています。弁護士の仕事で離婚に関係してる中で雑感としてよく思うことがいくつも含まれていますが、それらを適切・端的にまとめてくれている感じです。

 実親との面会交流は、基本的には実施することが子どものためであると私は思っていますが、子どもが板挟みになったり、条件闘争の繰り返しとなると、子どもにとって嫌な思い出・怖い思い出となるでしょうし、そこまではっきりした嫌悪感や恐怖心として残らなくても、おとなになっても心の奥に記憶や思いが残ることがあるのではと思っています。

 あまり関係のないかもしれない話ですが、私自身、けっこう小さい頃の出来事を覚えていて(また、物心ついたころに聞いた話も覚えていて)、家族と家族が対立していたときの嫌な思いや、保育園の先生に”めっ”と言われて睨まれたときの怖い思い、保育園の遊具から足を滑らせて遊具の間に挟まったときの状況や怖い思い(高所恐怖症のもと?)は覚えていたりします。

弁護士ドットコムニュースに取材記事が掲載されました(2017/7/9)

石川県金沢市の弁護士山岸陽平です。

弁護士山岸陽平が弁護士ドットコムニュースから取材を受けた記事が掲載開始されました。

www.bengo4.com

「旦那デスノート」について法的リスクの質問を受けたのでお答えしたのですが、私自身は、取材されるまで「旦那デスノート」というサイトを知りませんでした。

取材のテーマを知らされ、サイトを見てみると、これはなかなかキツいサイト。

匿名だから誰のことかわからないのがほとんどですが、内容は、名誉毀損プライバシー権侵害などのレベルに達しているものが多いです。書き込みたくなるほどの出来事が実際にあって書き込んでいるとしても、それを他人からわかるように公開してしまってよいわけでもないです。

 

近年は、「ネット専門」ではなく、ある程度ネットにも詳しいという私のような弁護士のところにも、匿名掲示板の削除・名誉毀損関係の相談や依頼がときどきありますが、「旦那デスノート」の書き込みは、身内ネタなだけに、ほとんど最大級の罵り表現をしていて、容赦なさがすごい気がします。

特定されないようにしている書き込みに関しては、なかなか第三者が見て「あの旦那があの妻に・・・」とはならないでしょうから、離婚原因になるか否かはかなり微妙なところだと思います。しかし、もし仮に書き込みが発覚したとなれば信頼関係がかなり損なわれるでしょうし、内容や対応次第では不法行為にも離婚原因になってきます。

 

こういうサイトが流行してくるということになれば、妻に聞く方法以外で妻の書き込みであることを証明したいというような場合、匿名掲示板や加害者加入のプロバイダ相手にやるのと同様、弁護士に依頼して、レンタルサーバー屋さんや書き込み者加入のプロバイダ相手の請求や訴訟をすることだって選択肢の一つになってくるかもしれません。

匿名ではなくてもSNSにいろいろ書き込むパターンは増えているし、今後、離婚の案件でもインターネット関係の知識や動向を把握している弁護士でないと、依頼者の意向を受けて準備するというのが困難な事案が増えてくるのかもしれませんね。

ただ、弁護士としては、解明の仕方の知識があるにせよ、どこまで徹底的にやるか、実のない話であれば躊躇しますね。

婚姻を継続し難い重大な事由とは? 「別居の期間」篇

民法が定めている離婚事由

民法は、離婚事由を定めています。

主に離婚事由が問題となるのは、離婚をすることについて当事者(夫・妻)の協議が整わないときです。

離婚事由は次の5つです(民法770条1項)。

  1. 不貞行為(いわゆる不倫・浮気)
  2. 悪意の遺棄
  3. 3年以上の生死不明
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みなし
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由

もっとも、裁判所は、上記1~4号の事由があるときでも、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができます(民法770条2項)。

 

最頻出の「5号」

私の感覚では、このうち、主張されることが多いのは、5号、1号です。

特に、5号は、「婚姻を継続し難い」といえる「重大な事由」であればよいので、暴行、虐待のほか、長期間の別居、犯罪行為、不労・浪費・借財等、配偶者の親族との不和、精神的疾患を含む重大な疾病・身体障害、過度の宗教活動など多様なものが挙げられます。そのため、かなり多くの離婚訴訟において主張されますし、離婚に向けて取り組まれている離婚調停においても主張されることがあります。

 

どれだけ別居すれば離婚が認められるのか?

かつて、5年が目安だと言われていたことがあります。

そして、婚姻期間が短い、小さい子どもがいない、等の場合には、期間が短くなる傾向にあり、逆に婚姻期間が長い、とか、離婚請求される側が未成熟子を育てている場合には、期間が長くなる傾向があると言われています。

また、専ら有責であるとか、有責性が比較的高い配偶者からの離婚請求は短期間では認められない場合が多いといえます。

しかし、このような一般論を踏まえても、「あなた」や「あなたの家族」、「あなたの知人」のケースで、どうなのかというと、これは、一概に言えない、事案による、ということになります。

そして、離婚訴訟においては、当事者双方(そして代理人となる弁護士)による事案の見方・伝え方がかなり影響してくるといえます。裁判所は、両方の見方を元に、取捨選択して事実認定し、評価していきます。裁判所に向けた訴訟活動がどう見られるか、という観点が非常に重要になります。

 

  金沢法律事務所 弁護士 山岸陽平